2011年10月10日月曜日

アンソニー・ホプキンス光る『羊たちの沈黙』

監督:ジョナサン・デミ

主演:ジョディ・フォスター アンソニー・ホプキンス

原作:トマス・ハリス

公開年:1991年





スリラー作品の大作『羊たちの沈黙』FBIの研修生クラリス(ジョディーフォスター)は女性の皮剥ぎ殺人犯のバッファロー・ビルの捜査担当になる。
彼女は事件真相の情報を求め天才精神科医であり現在は患者を食したために州の精神病院に措置入院しているDr.レクター(アンソニー・ホプキンス)を訪ねる。
レクターは事件解決のヒントを与える代わりにクラリスの過去の情報を提供することを求めるのであった。
物語自体はレクターのヒントを元に解決へと向かっていく単純なものであるが、やはりこの映画の魅力はレクター役のアンソニー・ホプキンスの演技だ。天才精神科医で犯罪者という役を演じており、この映画の印象そのものである。
とりあえず次回作も見ようと思えたので…

点数:70点

2011年10月4日火曜日

やはりほっとするジブリ『コクリコ坂から』

監督:宮崎 吾朗

公開年:2011年





昔からの習慣で新しいジブリ作品が公開されるとついつい見に行ってしまう。本作『コクリコ坂から』も全く見るつもりはなかったのだが、ジブリの魔力に惹きつけられ見ることにした。
本作は宮崎吾朗が監督であり『ゲド戦記』に続き二作目となる。前作はあまり評価は高くなかったようであるが、一変本作はジブリならではの淡い恋を描いており、僕としては大変満足の作品だった。

父を亡くしカメラマンの母を持つ小松崎海は母の留守中の家を切り盛りする高校生だ。彼女は今は亡き船乗りの父との思い出に突き動かされ、庭に付けられた旗を毎日あげている。
彼女が通う高校には歴史的文化財である文化部部室塔『カルチェラタン』があり、丁度取り壊し騒動の真っ只中であった。取り壊しを阻止しようと先頭に立つのが新聞部部長の風間俊である。海もそうした風間の行動を見て
『カルチェラタン』の良さを伝えるための大掃除を提案し、それを通じ二人は急接近していく。
実は風間は海の上から毎日、海が上げる旗を見ていた。自然と二人は結ばれあっていくのだが、実は二人には結ばれてはいけない大きな秘密があった。

本当に純粋で真っ直ぐで素直な恋愛。見ているだけで、ほっと心暖まる作品。こうした作品に出会えることは本当に幸せである。




点数:77点

思わず笑ってしまう復讐劇 C・ハイアセン著『復讐はお好き?』

小説の冒頭からその物語に入り込んでしまうケースは今まで読書の経験ではそれ程なかった気がする。記憶を辿ってみると山田風太郎と馳星周何かはその部類に入ると思うし、二人とも僕が大好きな作家の1人だ。
今回始めて読んだC・ハイアセンもそうした作家の1人になるかもしれない。
冒頭数行を読んで、この小説に引き込まれてしまった。
冒頭で主人公のジョーイ(女性)が客船から海に落ちるシーンから始まる。読んだ瞬間からなんだそりゃ?と思ってしまい、どんどん読み進めて行くようになる。
物語はジョーイが旦那のチャズに客船から落とされてしまい、命からがら生き延びる。絶望の淵にたったジョーイは命を助けてもらったミックとともに、自分を殺そうとしたチャズへの復讐劇を企てるというストーリー。夫はなぜ自分を殺そうとしたのかを考えながら進んでいく復讐劇はある種の爽快さえあり、物語全体を暗い感じにせず、ハリウッド映画のようなコメディタッチで描かれているところが面白い。それはやはりテンポよく物語が進んでいるが故に与える印象何であろう。
キャラクターもよく描かれていると思う。復讐劇を企てながら今までの夫との人生は何だったのかと考えるジョーイ。妻の復讐を受け精神的に追い込まれていく夫チャズ。ジョーイを助けジョーイの心の支えとなっていくミック。刑事のロールヴァーグ。チャズのボディガードを務めるも入院中の老婆との触れ合いの中で精神的更生を果たしていくトゥール。
C・ハイアセンは日本ではあまり認知度が高く無いらしいが、本当に素晴らしい作家だと思った。彼との出会いを与えてくれたのが児玉清氏著『寝てもさめても本の虫』である。本当に本との出会いは一期一会である。


点数:80点

2011年10月2日日曜日

芸術家の極限状態を描いた『ブラックスワン』に感激

監督:ダーレン・アロノフスキー

主演:ナタリー・ポートマン ヴァンサン・カッセル

配給:20世紀フォックス

公開年:2010年







すごい映画を見た。ダーレンアロノフスキー監督の『ブラックスワン』だ。芸術性の高さとスリリングな描写が非常に巧みである。

ナタリーポートマン演じる清楚なプリマドンナニナは念願であるヴァンカッセル演じる監督創作の白鳥の湖の主役の座を射止める。しかし、彼創作の白鳥の湖は清楚な白鳥と妖艶な黒鳥を演じなければならない。ニナは白鳥を演じることは出来るものの、妖艶な黒鳥を演じることが出来ない。
黒鳥を演じることの出来ないプレッシャー、ライバルの策略、過保護な母親からの愛情に挟まれ、徐々に身体的異常、幻覚に苛まれていく。
精神の極限まで追い詰められたニナは最後まで踊りきることが出来るのか?

恐らく天才アーティストの極限状態は『ブラックスワン』で描かれている世界に近いものがあるんではないだろうか。
ダーレンアロノフスキー監督はとにかく精神の異常状況を表現することがずば抜けている。皮膚がただれ、そこから茎みたいなものが出たり、バレリーナの足の指がくっついたり独特な表現方法だった。
白鳥の湖を踊り切ったニナが最後に『感じたわ。完璧よ。完璧だったわ』
と終わるが、まさしくニナが踊った白鳥の湖が完璧であると同時にこの作品自体が完璧を感じさせる作品となった。

点数:90点

児玉清に乾杯

児玉清が今年5月に亡くなった。
彼は名俳優でありながら、大の本好きでありました。
この本は児玉清氏が大好きであったイギリスとアメリカのおもしろ本に関するエッセー集となっています。

この本に紹介される本には
M・クライトン、D・フランシス、N・デミル、J・グリシャム、C・ハイアセン、E・シガール、T・クランシー、K・フォレット、P、コーンウェルなど有名作家の本との出会いが余すことなく書かれています。
僕が知る限り彼ほどイギリス、アメリカの小説に詳しい人はいないのではないでしょうか。

好きな作家の新作が待ちきれず、原書にまで手を出すという嵌りっぷり、常にポケットには文庫が入っていたという毎日。彼の本好きは亡くなられて尚、すばらしい作家の楽しい本との出会いを私たちに与えてくれると思うと本当に偉大な人であったことを再認識させてもらえます。

俳優でありながら最後まで本とともに生き続けた児玉清が僕は好きで仕方ない。

点数:75点