2011年10月4日火曜日

思わず笑ってしまう復讐劇 C・ハイアセン著『復讐はお好き?』

小説の冒頭からその物語に入り込んでしまうケースは今まで読書の経験ではそれ程なかった気がする。記憶を辿ってみると山田風太郎と馳星周何かはその部類に入ると思うし、二人とも僕が大好きな作家の1人だ。
今回始めて読んだC・ハイアセンもそうした作家の1人になるかもしれない。
冒頭数行を読んで、この小説に引き込まれてしまった。
冒頭で主人公のジョーイ(女性)が客船から海に落ちるシーンから始まる。読んだ瞬間からなんだそりゃ?と思ってしまい、どんどん読み進めて行くようになる。
物語はジョーイが旦那のチャズに客船から落とされてしまい、命からがら生き延びる。絶望の淵にたったジョーイは命を助けてもらったミックとともに、自分を殺そうとしたチャズへの復讐劇を企てるというストーリー。夫はなぜ自分を殺そうとしたのかを考えながら進んでいく復讐劇はある種の爽快さえあり、物語全体を暗い感じにせず、ハリウッド映画のようなコメディタッチで描かれているところが面白い。それはやはりテンポよく物語が進んでいるが故に与える印象何であろう。
キャラクターもよく描かれていると思う。復讐劇を企てながら今までの夫との人生は何だったのかと考えるジョーイ。妻の復讐を受け精神的に追い込まれていく夫チャズ。ジョーイを助けジョーイの心の支えとなっていくミック。刑事のロールヴァーグ。チャズのボディガードを務めるも入院中の老婆との触れ合いの中で精神的更生を果たしていくトゥール。
C・ハイアセンは日本ではあまり認知度が高く無いらしいが、本当に素晴らしい作家だと思った。彼との出会いを与えてくれたのが児玉清氏著『寝てもさめても本の虫』である。本当に本との出会いは一期一会である。


点数:80点

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