2011年9月27日火曜日

演劇 『雨』

原作:井上 ひさし

演出:栗山 民也

主演:市川 亀治郎 永作 博美









2011年6月に新国立劇場で行われた『雨』の演劇を先日BSで見ることが出来ました。初めてテレビ画面で演劇を見ることが出来どんな感じなのかと少しわくわくしながら見てみたところ、これがかなりの傑作で僕自身としてはすごく儲けものをした気分です。

主人公の市川亀治郎演じる徳は両国橋のふもとで金物拾いをする貧乏人。そんな貧乏人である徳がひょんなことから山形紅花問屋の失踪した若旦那に間違われることになります。失踪した若旦那にはきれいな妻がいてそれが永作博美演じるおたかです。それを知った徳は山形紅花花問屋の失踪した若旦那になりきることを決心します。

徳は回りの人の疑いの目をぎりぎりの所で交わしながら、紅花業を真剣に学び若旦那になりきっていきます。しかし徳が若旦那になりきることにおたかの巧妙な狙いが存在したのであった。

それは本物の若旦那には一つの罪がかけられており、お国から自害が言い渡されていました。本物の紅問屋の若旦那を隠し、代わりの若旦那(徳)を立てることで本物の若旦那の自害を免れることこそおたかの真の狙いであったのです。結果、徳は自害をすることになり物語は結末を向かえます。

この作品のおもしろいところは徳のなりすましを演じるどたばたを中心として物語が展開しながらも最後は残酷な結末をむかえるという巧妙に仕組まれたストーリーにあります。まさに井上ひさしの骨頂といったところでしょうか。
加えて徳の必死のなりすます姿が明治時代の欧米文化を吸収し本来の姿を失った日本人をだぶらせたというある種の世相をも浮き彫りにした点もこの作品の魅力です。
こうした徳の姿は別に明治の日本人に限らず、ありふれたひとの姿であると考えられ、自分自身も振り返って徳と重ね合わせてみると何か悲しくなるものです。ということで・・・

点数:85点

0 件のコメント:

コメントを投稿